iDeCoって?
iDeCoとは、個人型確定拠出年金のことを言います。平成13年に施行された私的年金の制度で、確定拠出年金法に基づいて実施されています。
iDeCoの仕組み
まず自分で掛け金を決めます。
そして自分が拠出した掛金を、自分で選んだ金融商品に運用します。
こうして掛金を60歳になるまで拠出し、60歳以降に老齢給付金を受け取ります。
受取額は、掛け金の額や運用益によって一人一人異なります。
※元本が保証されている商品や、元本割れの可能性もある商品もあります。
税務上のメリットはこれ!
iDeCoは運用益に対して非課税です
定期預金や一般の投資信託と比較してみましょう。
定期預金の場合
元本に預金利息がつきます。
この利息は所得税等の課税対象になるので、利息から所得税などが引かれた残りが手取りの金額となります。
一般の投資信託の場合
元本を運用することで運用益が生じます。
この運用益は所得税等の課税対象になる(配当は配当所得に、売却益は譲渡所得になります。)ので、運用益から所得税などが引かれた残りが手取りの金額となります。
iDeCoの場合
掛け金を運用することで運用益が生じます。
iDeCoの運用益は非課税なので、所得税などが引かれることはありません。
掛け金がそのまま所得控除されます
iDeCoの掛け金はその全額が所得税や住民税の計算上の“課税所得の金額”から控除されます。
年末調整や確定申告をすることで、毎年、その年中に支払った掛け金の全額が控除されます。
たとえば…
年収600万円の会社員が月2万円ずつ掛け金を支払っている場合
→年間の所得税の節税金額は48,000円になります。
48,000円の節税となると結構大きいですよね!
受け取る時も安心です
iDeCoは受け取る時に、その受け取り方法を年金もしくは一時金で受け取ることを選択することができます。
※金融機関によっては、年金と一時金を併用することもできます。
iDeCoの受け取り方と税金の仕組み
年金として分割で受け取る場合
受給権が発生する年齢(原則60歳)に到達したら、5年以上20年以下の期間で分割して受け取ることができます。
→“雑所得”として取り扱われます
他の公的年金等の収入がある場合には、それらと合算した合計額が公的年金等に係る雑所得の金額となり、この雑所得の金額に応じて公的年金等控除の対象となります。
(令和2年以降は下記の通りとなります。)
①65歳未満の場合
- 公的年金等以外の所得が1,000万円以下
公的年金等の収入 | 所得 |
0円〜600,000円 | 0 |
600,001円〜1,299,999円 | 収入×100%-600,000 |
1,300,000円〜4,099,999円 | 収入×75%-275,000 |
4,100,000円〜7,699,999円 | 収入×85%-685,000 |
7,700,000円〜9,999,999円 | 収入×95%-1,455,000 |
10,000,000円以上 | 収入×100%-1,955,000 |
2. 公的年金等以外の所得が1,000万円超2,000万円以下
公的年金等の収入 | 所得 |
0円〜500,000円 | 0 |
500,001円〜1,299,999円 | 収入×100%-500,000 |
1,300,000円〜4,099,999円 | 収入×75%-175,000 |
4,100,000円〜7,699,999円 | 収入×85%-585,000 |
7,700,000円〜9,999,999円 | 収入×95%-1,355,000 |
10,000,000円以上 | 収入×100%-1,855,000 |
3. 公的年金等以外の所得が2,000万円超
公的年金等の収入 | 所得 |
0円〜400,000円 | 0 |
400,001円〜1,299,999円 | 収入×100%-400,000 |
1,300,000円〜4,099,999円 | 収入×75%-75,000 |
4,100,000円〜7,699,999円 | 収入×85%-485,000 |
7,700,000円〜9,999,999円 | 収入×95%-1,255,000 |
10,000,000円以上 | 収入×100%-1,755,000 |
②65歳以上の場合
- 公的年金等以外の所得が1,000万円以下
公的年金等の収入 | 所得 |
0円〜1,100,000円 | 0 |
1,100,001円〜3,299,999円 | 収入×100%-1,100,000 |
3,300,000円〜4,099,999円 | 収入×75%-275,000 |
4,100,000円〜7,699,999円 | 収入×85%-685,000 |
7,700,000円〜9,999,999円 | 収入×95%-1,455,000 |
10,000,000円以上 | 収入×100%-1,955,000 |
2. 公的年金等以外の所得が1,000万円超2,000万円以下
公的年金等の収入 | 所得 |
0円〜1,000,000円 | 0 |
1,000,001円〜3,299,999円 | 収入×100%-1,000,000 |
3,300,000円〜4,099,999円 | 収入×75%-175,000 |
4,100,000円〜7,699,999円 | 収入×85%-585,000 |
7,700,000円〜9,999,999円 | 収入×95%-1,355,000 |
10,000,000円以上 | 収入×100%-1,855,000 |
3. 公的年金等以外の所得が2,000万円超
公的年金等の収入 | 所得 |
0円〜900,000円 | 0 |
900,001円〜3,299,999円 | 収入×100%-900,000 |
3,300,000円〜4,099,999円 | 収入×75%-75,000 |
4,100,000円〜7,699,999円 | 収入×85%-485,000 |
7,700,000円〜9,999,999円 | 収入×95%-1,255,000 |
10,000,000円以上 | 収入×100%-1,755,000 |
一時金として一括で受け取る場合
受給権が発生する年齢(原則60歳)に到達したら、70歳になるまでの間に、一時金として一括で受け取れます
→“退職所得”として取り扱われます
退職所得は、次の計算式によって計算します。
そして、この退職所得控除額は、確定拠出年金の積立期間(勤続年数)によって金額が算出されます。計算方法は下記の通りです。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円 × 勤続年数 (80万円に満たない場合には、80万円) |
20年超 | 800万円 + 70万円 × (勤続年数−20年) |
一時金と年金を組み合わせて受け取る場合
受給権が発生する年齢(原則60歳)に到達した時点で、一部を一時金で受け取り、残りを年金で受け取る支給方法を取り扱っている運営管理機関もあります。
年金で受け取る場合の注意点
確定拠出年金を年金として受け取る場合、その年中のすべての所得(一部を除く)と合算した合計の所得金額(総所得金額)によって所得税額の計算をします(総合課税)。
この所得税率は一定ではなく、総所得金額が高くなるほど税率も高くなる仕組みになっています。
ですので、年金として受け取りたい場合、公的年金やその他の所得が多くなりそうな人は、少しでも所得が少ないと見込まれるタイミングで確定拠出年金を受け取るなど、受け取るタイミングに注意した方が税負担が軽くなることがあります。
一時金で受け取る方が有利な理由
確定拠出年金を一時金で受け取る場合、“退職所得”に該当することになります。
退職所得は、他の所得と分けて税金の計算を行います(分離課税)。ですので、他の所得が大きい方でも他の所得の多少によって税率が上がることがありません。
また、退職所得の計算の際には、所得の金額を1/2するので、退職所得として一時金で受け取ることで、他の所得に比べて税負担が軽くなります。
(令和元年分の税率及び控除額は下記の通りとなります。)
課税退職所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
ちなみにこの退職所得には会社から受け取る退職金がある場合、その退職金の額も含んだ合計額によって計算します。
会社を退職される際に会社から退職金がいくら支給されるかを事前に確認した上で確定拠出年金の受け取り方や受け取る時期を検討するのも節税につながります。
もし加入者が亡くなってしまったら…
ちなみに、もし加入者が亡くなってしまった場合、iDeCoの掛け金はどうなるのでしょう?
この場合、遺族に対して死亡一時金が支給されます。
この死亡一時金はみなし相続財産として、相続税の課税対象となるので注意してください。
iDeCoのデメリット
ちなみに、iDeCoにもメリットだけじゃなくデメリットもあるので始める前にはこちらもちゃんとチェックしておく必要があります!
60歳まで引き出しができません
iDeCoで積み立てたお金は原則60歳まで引き出すことができません。
また、積立期間が10年に満たない場合にはさらに引き出すことが出来る年齢が後ろ倒しになります。
それはiDeCoの積み立ての目的が老後の資金形成だからです。
なので、もし予想外の出費や急に病気になったなど緊急の資金が必要になったときにもiDeCoの積み立て金額には一切頼ることが出来ません。
iDeCoに積み立てるお金は、生活資金でないことはもちろんのこと、何か緊急の時の備えのお金も確保したうえでさらに残った、本当の余剰資金を積み立てる必要があるので注意してください。
元本割れのリスクがあります
iDeCoは自分で金融商品を選んで掛け金を運用するため、その運用次第によっては元本割れするリスクがあります。
将来の老後の資金形成が目的ではあるものの、受け取る額がその時まで確定しないため、常にリスクがあることを念頭に入れておく必要があります。
手数料がかかります
iDeCoを始める際にはメリットばかりが目につきがちですが、運用するためには手数料もかかるので注意が必要です。
口座を開設する際に支払う手数料、掛金を積み立てている間中支払う事務委託手数料など、金融機関によって手数料の有無や金額が異なるため、口座開設の際にはチェックしてください。
手数料は商品によって異なるため、手数料のことも念頭に置いて金融商品選びをしないと、最悪の場合、手数料が運用の利回りを上回ってしまう、なんてことがなくもありません。
まとめ
iDeCoは将来の老後資金形成のための資産運用として、税金の面からは非常に魅力的です。
しかし、メリットのみに気を取られすぎて、いざ始めてみたらいろいろなデメリットがあった、ということもよくあります。
「知らなかった」では保障されない大切なお金のこと。
きちんとメリット・デメリットを知ったうえで始めることが大切です。
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